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ワキガの手術でおこりうる後遺症の種類と防止方法とは?

わきが手術・多汗症治療 (剪除法)

解説 口コミ広場編集部
監修 橋本健太郎 医師

公開日:2019/02/08


ワキガの手術をためらっている理由として、たとえにおいが無くなっても手術による傷跡など、後遺症が心配だという人も多いと思います。確かに、どんな手術でも後遺症が残ってしまう可能性はゼロではありません。そこで、今回はワキガの手術でおこりうる後遺症とはどんなものか?そして後遺症を防ぐためにはどんな事に注意するべきか?について解説します。

監修 橋本健太郎

静岡美容外科橋本クリニック 院長

2004年  日本大学医学部卒業 医師免許取得
     同大学で麻酔科医として勤務
2004年~ 日本大学病院勤務
     以後、美容外科医、形成外科医として経験を積む
2008年  南青山クリニック院長 就任
2010年  銀座アテナクリニック本院開設
2016年  静岡美容外科 橋本クリニック開設

1. 確実な手術ほど後遺症のリスクがある

ワキガの手術と言っても、それぞれのクリニック独自のものを含めると、本当にさまざまな方法があります。


一体どの方法だと後遺症が残りにくいのか? というのは術後の過ごし方にもよるので一概には言えませんが、ひとつの基準として、アポクリン腺、エクリン腺を確実に取り除ける手術ほど皮膚へのダメージが大きく、手術跡などの後遺症のリスクも高くなります。


例えば、脇の皮膚を裏返して目視でアポクリン腺を確認しながら切除する剪除法や、皮下組織ごと汗腺を取り除く皮下組織削除法(イナバ式)は、切開する長さは小さいが、隔離の範囲が大きく、またアポクリン腺、エクリン腺は解剖学的に真皮層直下にあるため、除去する段階で真皮層を傷つけてしまう可能性が大きく、後遺症のリスクは比較的高くなります。(術者の技量に大きく依存します)


一方で、吸引法や超音波法などの、汗腺を切り取るわけでなくカニューレで吸引したり、超音波で破壊するような方法はダメージが少ない傾向にあります。切開の傷も数㎜程度なので、後遺症が起こるリスクは比較的低いでしょう。

しかし、その反面こういった治療法はアポクリン腺、エクリン腺をほとんど除去しきれず、残ってしまう可能性が高い事から、治療の効果としては前述の剪除法などと比べ低くなりやすく、ワキガのにおいを軽減はできても完全に解消する事ができないという可能性があります。


このように、効果の確実さと後遺症のリスクはある程度比例します。クリニックによっては、独自の手術方法を取り入れている場合もあるので、手術の効果だけでなくどれくらいのリスクがあるのか? どのような後遺症が残る危険性があるのか?という点もカウンセリングの際に説明を受けるようにしましょう。


2. ワキガの手術でおこりうる後遺症の種類

それでは、実際にワキガの手術でおこりうる後遺症について詳しく解説していきます。


皮膚の引きつれ・つっぱり

手術後に脇の皮膚が硬くなり、腕を動かすと引きつれたような感じや、つっぱり感が残る事があります。手術直後の2週間〜4週間のあいだは良くある症状として経過観察をしますが、場合によっては軟膏で皮膚を乾燥や刺激から守る事で回復を早める事もあります。ほとんどの場合は1ヶ月程度で違和感が無くなり、2〜3ヶ月もすれば完全に治ります。1年以上違和感が残ったり、後遺症として症状が残るケースは稀です


皮膚の壊死

皮膚の下に血が溜まったまま放置したり、手術後安静にせず細胞がダメージを受けて回復が遅れると、皮膚の一部の細胞がダメージによって死滅してしまい壊死する事があります。部分的な場合は軟膏で治療をしますが、場合によっては再手術が必要になる事もあります。


しびれ・感覚が鈍くなる

手術後は脇の皮膚を触ってもほとんど感覚が無かったり、二の腕あたりに軽いしびれを感じる事があります。慎重に手術をしても神経を傷つけてしまう事があるので、手術後の症状としては良くあるケースです。安静にしていれば数週間で良くなりますが、人によっては数ヶ月間続く事もあります。一生後遺症として残る事はごく稀です。


ケロイド

手術直後は、切開した傷が赤く盛り上がってしまう事がありますが、通常は回復とともに目立たなくなります。ただし、人によっては数ヶ月経っても治らず徐々に大きくなっていく事があり、その症状をケロイドといいます。ケロイドの原因は医師の腕というよりも、もともとケロイドになりやすい体質かどうかが大きいといわれています。ステロイド剤を使った治療で完治しなければ、手術によって切除する必要がありますが、ケロイドになりやすい体質の方は切除手術によってもまた小さなケロイドができてしまうなどの可能性があるため、完全な治療が難しい場合もあります。


代償性発汗

特定の場所で汗をかかなくなる事により、他の部分の汗が増える事を代償性発汗といいます。

ワキガの手術で脇の汗腺を除去する事により、その分の汗を他の部位でかいて体温を下げようとするため、このような症状が引き起こされます。

脇の汗がなくなった場合、代償性発汗が起こりやすい場所としては、デコルテや顔、頭といった脇より上の部位です。

ワキガの原因となる汗とは異なり、エクリン腺からの水分がほとんどを占めている汗ですので体臭が悪化するという事は基本的にありませんが、顔などの汗が増える事でメイクへの悪影響などとなる場合があるので注意が必要です。


術後臭

術後臭は医学的に解明されていないので正確には後遺症のカテゴリーには入りませんが、術後の症状として悩んでいる人が多いのも事実です。術後臭とは、ワキガの手術は成功しても手術する前とは違うにおいを感じたり、脇以外の場所からにおいがするようになる事をいいます。

その原因としてはおそらく、脇の汗が出なくなった事により別の場所の汗が増える代償性発汗の影響によるものか、もしくは脇のにおいが無くなった事によって別の場所のにおいを感じるようになるのではないかといわれています。


3. ワキガの手術による後遺症を防ぐためには

後遺症が残ってしまう大きな原因として、以下のようなものが考えられます。


・医師が手術中に大きな血管や神経などを傷つけてしまった

・術後を安静に過ごしていなかった

・異常を感じてからすぐに治療をしなかった

・体質によるもの


まず、医師による手術中のトラブルは、ワキガ手術に精通しているベテランの医師であれば頻繁におこることではありません。仮に神経を多少傷つけてしまい手術後にしびれを感じても、一生後遺症として残るようなケースはほとんどありません。そのため、信頼できる医師に任せれば手術の失敗による後遺症は最小限に抑える事ができるでしょう。


むしろ、手術後に患者がどれだけ安静に過ごしていたかが傷の回復には大きく関わってきます。固定が外れた後も、傷が塞がっていないうちは腕を大きく上げたり、動かすような行為は避けましょう。傷口が開くときれいに治らなかったり、出血して皮膚の中に血が溜まると合併症を引き起こす原因になります。


ダメージの大きい剪除法や皮下組織削除法(イナバ式)でも3日間で本格的な固定が外れますが、できれば5日〜1週間は仕事や学校を休んで安静にしている方が後遺症が残るリスクは低くなります。


ただ、ケロイド体質の人など、どんなに安静にしていても傷がきれいに治りにくい体質の人がいます。数週間が経過してもまったく傷がきれいにならない、むしろ悪化しているという場合は、放置せずすぐに医師に見せるようにしましょう。後遺症として一生残るかは早期発見と治療にかかっていますから、少しでもおかしいと感じたら至急医師に相談するようにして下さい。


手術ではないワキガ治療では後遺症がない?

手術によってアポクリン汗腺を除去する方法ではなく、マイクロウェーブによって肌の上から汗腺を破壊するミラドライや、高周波を発する電極を差し込んで汗腺を破壊するビューホットなどは、その治療法の特徴から手術のような肌へのダメージが無く、後遺症が少ないという紹介をよく目にします。


ミラドライはその特徴から、確かに肌表面へのダメージは最小限で抑えられる可能性がありますが、高い熱によって細胞を破壊しているため、治療の技量度合いや、術後の過ごし方などによっては皮膚のつっぱりやしびれといった後遺症が残る可能性はあります。


また、ビューホットの場合は直接電極のついた針を差し込むため、等間隔で傷跡がつく事は避けられず、場合によってはその傷跡がある程度長期にわたって残り続けるという可能性もあります。


こうした方法は確かに細胞へのダメージなどが少ない面もありますが、だからといって完全に肌へのダメージを回避するという事は難しく、また治療によるワキガの症状を解消する効果は、どうしても剪除法など直接汗腺を除去する手法と比べ低くなりますので、自身のワキガの症状の度合いや、目指すべき治療結果、そして後遺症へのリスクなどから、最適なレベルの治療を選ぶようにしましょう。


まとめ

ワキガの手術による後遺症は、確実にアポクリン腺、エクリン腺を取り除く事ができる方法の方がリスクが高くなります。皮膚をひっくりかえして直接汗腺を除去するような手術は、高い効果の反面、傷や皮下組織に大きなダメージを受けるため、皮膚のひきつれやつっぱり感、壊死、しびれ、ケロイドなどの後遺症が残ってしまうリスクがあるのです。


こういった後遺症が引き起こされる原因としては、手術中に神経などを傷つけてしまうなど医師の技量に起因するものだけではなく、手術後の過ごし方にも大きな要因があります。ワキガの手術は脇の細胞に大きな負担をかけるものですので、術後の圧迫や固定をしっかり行うほか、食生活をはじめとした生活習慣にも気を配って、手術跡がなるべく早く、正常に回復するようにつとめましょう。

稀にケロイド体質などで傷が悪化しやすい体質の人もいますが、とにかく異常を感じたらすぐに医師に相談する事が大切です。


ベーシックな手術以外にも、今はクリニックによってワキガ治療を目的とした独自の手術方っ法を行ている事もありますが、その手術にはどんなリスクがあるのか、そしてどのような後遺症が残る危険性があるのかを事前にしっかり確認するようにしましょう。

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