ケミカルピーリングで毛穴の開きは解消できる?
ニキビ・ニキビ跡の治療 (ケミカルピーリング)
公開日:2019/02/04
毛穴の開きには原因別にいくつかのタイプがありますが、共通しているのは、いろいろとケアをしても改善が難しい、あるいはすぐにまた開いてしまう、ということではないでしょうか。
この悩ましい毛穴の開きを解消してくれる方法のひとつに、今回取り上げるケミカルピーリングがあります。
「毛穴の開きにケミカルピーリング?」と思われる方もいるかもしれません。「名前はよく聞くけど、どんなものなのか正直よくわからない」という方もいらっしゃるかもしれません。
そこで今回の記事では、ケミカルピーリングとはどんなものなのか、そして毛穴の開きに効果があるのかについて詳しくご説明していきます。
監修 宇井千穂
やさしい美容皮膚科・皮フ科 秋葉原院/シミレーザー東京 院長
2004年 公立福生病院勤務
2006年 土佐清水病院勤務 同時に非常勤として銀座の某クリニック勤務
2019年 やさしい美容皮膚科・皮フ科秋葉原院 開院
注)今回こちらの記事で取り上げているケミカルピーリングは、皮膚科や美容皮膚科などの医療機関で行われているものを前提としています。ケミカルピーリングは、安全性の高い施術ですが、薬剤によって表皮を剥離するため、皮膚の専門知識があり十分な治療技術を有する専門の医師のもとで受ける方が、より安全で確実だと言えます。厚生労働省からも、2000年11月にケミカルピーリングは医療行為に当たるという内容の通達が出されています。
まずは結論から!毛穴の開きにケミカルピーリングは効果アリ!
結論からお伝えすると、美容クリニックで受けられるケミカルピーリングは、毛穴の開きに効果があります。
ケミカルピーリングは、専用の薬剤を顔に塗布して不要な角質を取り除き、新しい皮膚への再生を促します。美容クリニックでは、このケミカルピーリングの作用を利用して、お肌のくすみやシミ、そばかす、ニキビやニキビ跡、小じわ、肌のキメやハリなど、さまざまなお肌の悩みを改善するための治療を行っています。もちろん、毛穴の開きの改善にも効果的です。
しかもケミカルピーリングは、美肌医療の中でも基本中の基本とも呼べる施術で、美容皮膚科に限らず一般の皮膚科でも実施しているところがたくさんあります。保険適用のない自由診療ですが、価格は比較的手頃で、費用の面でもトライしやすいと言えるでしょう。
ケミカルピーリングについて具体的にお話しする前に、どうして毛穴が開いてしまうのか、まずは毛穴のことや毛穴が開く原因について一緒に見ていきましょう。
毛穴の役割
開いてしまった毛穴は、見れば見るほど気になります。メイクすると余計に目立つこともあるため、「毛穴なんかなければいいのに!」と、つい邪魔者扱いしてしまうかもしれません。だけどそんな毛穴にも重要な役割があります。
①体温調節
私たちの体は、体温を一定に保つために常に体温調節を行っていて、毛穴にもその役割があります。暑い時は体温が上昇しないよう汗をかいて放熱するために毛穴は開き、寒い時には毛穴は収縮して体から体温が逃げるのを防ぎます。このように、毛穴は、外部環境の変化に対応するための働きをしています。
②お肌を守る皮脂膜をつくる
毛穴には汗腺や皮脂線があり、汗や皮脂を分泌しています。その汗と皮脂が合わさることで、肌の表面に皮脂膜が作られます。これはまさに天然の保湿クリームで、外部からの刺激からお肌を守ったり、肌の水分が必要以上に蒸散することを防いでくれています。また、皮脂は皮膚のphバランスを弱酸性に保ち、雑菌の増殖を抑える働きもしています。
③老廃物の排出
体内での代謝を経て産出されるものの中で、体にとって不要なものや有害なものが老廃物です。老廃物は尿や便によって体外に排出されますが、毛穴から出る汗や皮脂からも排出されています(割合としては少ないです)。
毛穴が開く原因
毛穴に重要な役割があることはわかりましたが、赤ちゃんや子供の肌の毛穴は、全く目立ちません。その目立たなかった毛穴がなぜ開いてしまうのか、その原因には以下のようなものがあります。
①皮脂の過剰分泌(毛穴の詰まり)
皮脂が必要以上に分泌されると、余分な皮脂が毛穴を詰まらせ、毛穴を広げてしまいます。また、皮脂によって毛穴が詰まると、アクネ菌が増殖してニキビの原因になったり、他の汚れや古くなった角質と皮脂が混ざって角栓ができてしまう原因にも。そして角栓が長く詰まったままになると、空気に触れている部分が酸化を起こします。これがいわゆる黒ずみです。毛穴が黒ずんでしまうと、さらに毛穴は目立ってしまいます。
*皮脂はお肌への異物の侵入を防いだり、お肌の水分をキープする役割があり、ある程度は必要なもの。少なすぎるとお肌を乾燥させ、さまざまな肌トラブルを招いてしまいます。
皮脂が過剰に分泌されてしまうのには、ホルモンバランスの変化、食生活や生活習慣、過度なストレスなどさまざまな要因があります。油っぽい食事を控え、十分な睡眠や軽い運動、ストレス発散など、ぜひ心がけてください。また、お肌が乾燥してしまうと、逆にお肌を守ろうとして皮脂が過剰に分泌されてしいます。正しい洗顔(皮脂や汚れはきちんと落とす、でも洗い過ぎない)を行い、その後はしっかりと保湿をして、お肌の潤いをキープしてあげることは、皮脂の過剰分泌を防ぐためにも大切です。
②ニキビ
ニキビは、毛穴に皮脂がたまることでアクネ菌が増殖し、炎症を起こすことでできてしまいます。皮脂だけでなく、古くなった角質や汚れが詰まることによっても、アクネ菌は増殖します。
ニキビができると、炎症によって毛穴の周囲が盛り上がったり、コラーゲンも傷ついて肌もゆるむため、毛穴の開きが目立つようになります。また、ニキビを無理に潰して肌の細胞を傷つけたり、真皮層まで炎症が達してしまったりする、瘢痕化(はんこんか)といって、毛穴が開いたまま(窪んだまま)の状態になり、デコボコしたクレーター状のニキビ痕が肌に残ってしまう場合もあります。
*一時的に男性ホルモンの分泌が増加することでできる思春期のニキビや、肌の乾燥やストレス・食生活の乱れによってできる大人になってからのニキビも、根本的な原因の違いはあれど、どちらも皮脂の過剰分泌による毛穴の詰まりが大きな原因です。また、ニキビはできやすい人や悪化しやすい人がいたりと、体質による違いもあります。瘢痕化してしまったニキビの痕は、セルフケアでは治すことが難しいため、できれば早い段階で皮膚科を受診し治療を受けることをおすすめします。
③皮膚のたるみ(たるみ毛穴)
楕円形やしずく型に開いてしまった毛穴は、皮膚のたるみが原因です。紫外線の影響や加齢などによって真皮にあるコラーゲンやエラスチンが減少すると、肌の弾力が失われ、その影響で肌が下方向にたるんできます。これによって毛穴は引き伸ばされるように広がってしまい、楕円形やしずく型の毛穴となってしまいます。また、たるみによる毛穴の開きが進行し、開いた毛穴が帯状につながって「帯状毛穴」となって、シワのようになってしまうこともあります。
④乾燥
細胞が十分な水分を保持している状態の肌は、ハリがあってキメも整っているため毛穴が目立ちません。しかし肌が乾燥することでハリが失われると、たるみによる毛穴と同様、毛穴が広がってしまいます。キメが乱れて肌の透明感が失われることにより、さらに毛穴が目立ちやすくなる傾向もあります。
さらに乾燥が進むと、皮脂を分泌して肌を乾燥から守ろうとするため、表面は脂っぽいのに内部は乾燥しているというインナードライ肌になりやすくなります。
⑤毛穴周囲が溶かされて広がって見える
乾燥などによって肌のターンオーバーが乱れると、肌に古い角質が残って厚くなるなど、肌質の変化が起こります。
このような状態の中で、毛穴から皮脂が分泌されていると、皮脂から作られた脂肪酸によって毛穴周囲の肌が溶かされやすくなり、毛穴周囲がすり鉢状になる場合があります。
毛穴そのものが広がっているわけではないのですが、毛穴周囲の肌がすり鉢状に窪む事で、毛穴が大きく広がったように目立ち、毛穴が開いていると感じるようになります。
毛穴の開きに効果的なケミカルピーリング!
ここまでご紹介してきたように、毛穴が開く原因には皮脂の過剰分泌やニキビ、皮膚のたるみや乾燥などさまざまなものがあります。こうした毛穴の開きを総合的に改善できるのが、美容クリニックでのケミカルピーリングです。
では、ケミカルピーリングとはどんなものなのか、具体的にご紹介していきましょう。
ケミカルピーリングとは
ケミカルピーリングは、薬剤(酸)を皮膚に塗ることで、皮膚の表面にある角質層から表皮の上層部を剥離(はくり)させ、新しい細胞の生まれ変わりを促す創傷治癒(そうしょうちゆ)の仕組みを利用した治療法です。創傷治癒とは、細胞が傷ついた時にその傷を修復しようとする自然治癒力のことだとお考えいただくと、分かりやすいかもしれません。
皮膚を、「ケミカル=化学物質」で「ピーリング=剥ぐ」という言葉の強さから、「なんとなく怖い」「ハードな治療?」というイメージをお持ちの方もいらっしゃるかもしれませんが、実際のケミカルピーリングでは、肌の一番外側にあるごく薄い角質層のみを優しく除去するだけです。ちなみに表皮の厚さは平均0.2mmほどで、その最上部にある角質層は0.02mmという薄さです。
施術中、ピリピリした刺激を感じることはありますが、ダウンタイムはほとんどなく、施術後も皮がポロポロとむけたりすることもありません。多少赤みが出る場合はありますが、多くの場合、すぐにメイクをすることも可能なので、治療直後でも周囲の目を気にしないでいられるというのも利点の一つです。
お肌の不調を招くターンオーバーの乱れ
シミやくすみ、毛穴の開きといったお肌の不調の多くは、ターンオーバーの乱れから始まります。通常、若く健康的な肌であれば、肌は約1カ月(28日前後)の周期で新陳代謝を繰り返していて、古くなった角質は自然と垢となってはがれ落ちます。
これをターンオーバーと言いますが、偏った食生活や不規則な生活習慣、ストレス、そして加齢などさまざまな原因によってターンオーバーは乱れて遅くなり、古くなった角質が排出されずに肌に蓄積し厚くなっていきます。その結果、シミやくすみをはじめとした肌トラブルが起きやすくなり、毛穴にも角質が詰まって毛穴の開きやニキビの原因にもなります。
そこでケミカルピーリングで古くなった角質を除去することで、肌はその再生能力を発揮し、ターンオーバーは正常化へと向かいます。そして新しい健康なお肌へと生まれ変わっていくのです。
ケミカルピーリングが毛穴の開きに効果的な理由
ケミカルピーリングでは、古くなった角質とともに、毛穴に詰まった余分な皮脂や汚れも取り除きます。毛穴の詰まりが除去されることで、毛穴が引き締って目立たなくなり、ニキビも改善します。皮脂の過剰分泌やニキビによって開いた毛穴の改善には特に効果的です。
また、肌のターンオーバーを正常化し、同時にコラーゲンやエラスチンの生成も促進させるため、定期的に行うことで健やかでハリのある肌へと生まれ変わり、乾燥やたるみなどによる毛穴の開きを改善していく効果も期待できます。
ケミカルピーリングで肌の状態をリセットする事で、毛穴トラブルを解消に導いていく事が可能となるのです。
ただし、毛穴トラブルの中でもクレータータイプのニキビ痕のように、肌の深い部分にその原因がある場合には、ケミカルピーリングを行っても解消する事はできません。
このような場合には、肌の深くまで再生を促す事ができるようなレーザー治療や、ケミカルピーリングよりも強い酸を使い、肌の深くまでケアを行う事ができる治療方法を選択する必要がありますので、一度相談してみると良いでしょう。
ケミカルピーリングで使用される薬剤
ケミカルピーリングで使われる薬剤にはグリコール酸やサリチル酸、トリクロロ酢酸(TCA)や、乳酸、アミノ酸などさまざまな種類がります。肌の状態によってこれらの薬剤の濃度を変えたり、いくつかの薬剤を組み合わせて使用することもあります。1種類しか用意していないクリニックもあれば、複数の薬剤を使い分けているクリニックもあります。
中でもポピュラーなのは、グリコール酸とサリチル酸です。
グリコール酸は、フルーツ酸と呼ばれることもあります。濃度を変更できるため、一人ひとりの肌質に合わせたり、低い濃度から試すなど、幅の広い治療ができるという特徴があります。日本人(黄色人種)の肌に最もマイルドに作用すると言われており、多くのクリニックで使用されています。
サリチル酸は、マクロゴールという基材に溶かして使用されることが多く、サルチル酸マクロゴールと呼ばれます。サリチル酸には強力な溶解作用がありますが、マクロゴールと組み合わせることで深部への浸透を防ぎ、角質層のみを剥離できます。サリチル酸とマクロゴールを合わせることで、施術中の痛みや副作用を抑えつつも、高いピーリング効果が得られるようになりました。角栓をできにくくすると言われており、ニキビの治療にも多く使われています。現在、主流となりつつあるピーリング剤です。
トリクロロ酢酸は、さらに強力な剥離作用と、皮膚の深部を刺激してコラーゲンを増加させる作用があります。
乳酸ピーリングは、天然乳酸を主成分としており、ピーリング作用がマイルドで保湿や美白作用もあります。
アミノ酸ピーリングも、刺激が少なくマイルドなピーリングですが、アクネ菌の繁殖を防ぐ効果もあり、ニキビやニキビ痕の治療にも効果的です。
ケミカルピーリングの流れ
一般的なケミカルピーリングの施術の流れを解説します。平均的な施術時間は20~30分ほどです。
*これはあくまでも一例で、使用する薬剤や肌の状態、そしてクリニックによっても違いがあります。
- 顔に皮脂が残っていると、ピーリングの効果が十分発揮できないため、クレンジングと洗顔で顔の皮脂を丁寧に落とします。
- ハケや綿棒などを使って、ピーリング剤を素早く塗布していきます。肌の状態に応じて様子を見ながら数十秒から数分放置し、その後ピーリング剤を拭き取るか、中和剤で中和します。
- 薬剤を洗い流し、必要に応じて冷却マスクやローションパックでクールダウンと保湿を行います。
ケミカルピーリング後の注意点
ケミカルピーリングは、施術後のダウンタイム(回復に必要な時間)がほとんどありませんが、角質を取り除いたことで保湿成分が減少するため、治療後は一時的に乾燥しやすく敏感な状態になっています。
基本的に施術直後からメイクしても大丈夫ですが、可能であればノーメイクでお肌を休ませてあげましょう。そして、施術後はしっかりと保湿を行い、洗顔は石けんを良く泡だてて、直接手で肌をこすらないように優しく洗うようにします。また、角質を除去したことで紫外線が通過しやすい状態ですので、紫外線対策もしっかり行う必要があります。
施術直後は、多少の赤みが出たり、肌がカサカサする場合もありますが、ほとんどはすぐにおさまります。ただし、もし何か異常を感じた場合は、すぐにクリニックに相談するようにしてください。
治療回数
基本的に1回でも効果を実感できますが、肌質改善など、より高い効果を目指すには4週間ごとに5回程度継続することが推奨されていますただし、肌の状態や年齢、ピーリング剤の種類によって、効果の現れ方に違いがあるため、治療過程を観察しながら進めていくことが多くなっています。
費用
ケミカルピーリングは自由診療になるため、クリニックによって費用に違いがありますが、1回数千円から1万円前後が相場です。使用する薬剤によっても費用は異なり、一般にグリコール酸よりもサリチル酸マクロゴールの方が高価です。ただしグリコール酸もサリチル酸マクロゴールも、個人差で合う合わないがありますので、簡単に価格のみで比較するのは難しいと言えます。
また、5~6回のお得なセット料金を設定しているクリニックもありますので、受診する医療機関で確認してみてください。
併用すると効果のある治療
ケミカルピーリングによって、古い角質を除去した後のお肌は、美容成分も浸透しやすくなっています。そのため、イオン導入と併用することで、より高い効果が得られます。イオン導入は、肌に微弱な電流を流すことによってビタミンCなどの有効成分をお肌の深部に浸透させる施術です。
また、お肌も滑らかになっているため、フェイシャルレーザー治療やフォトRFなどの光治療もより効果が出やすくなります。シミや赤ら顔など、さらなる美肌治療を求める方は、フェイシャルレーザー治療や光治療との組み合わせもおすすめです。
最後に
ケミカルピーリングは、毛穴の開きはもちろん、シミやくすみ、小じわ、ニキビなど、さまざまなお肌の悩みをトータルでケアできる治療法です。痛みやダウンタイムもほとんどなく、効果も実感しやすいため、美容医療初心者の方にもおすすめです。費用も1回数千円から10,000円前後と比較的手頃ですので、毛穴の開きにお悩みの方は、一度ケミカルピーリングでお肌をリセットしてみてはいかがでしょうか。
ただし、ケミカルピーリングを受けたからといって、それ以降ずっとキレイな肌でいられるという訳ではありません。毛穴の開きで悩まないためにも、それまでのスキンケアの見直しや生活習慣の見直しも含めた毛穴ケアも忘れずに行うようにしましょう。