全切開を伴う従来の眼瞼下垂手術の高いリスクと背景とは?
目・二重整形 (眼瞼下垂)
公開日:2022/08/16
●たとえ眼瞼下垂と診断されたとしても、上瞼の切開や切除は原則NGなので思い留まりましょう!
「挙筋短縮術」や「挙筋前転術」では、全切開した皮下の浅層から挙筋に至る深層までの間の組織に、ミクロレベルの線維化(創傷治癒過程で万人に起こる傷の修復現象の一つ)が生じるため、二重ラインがガタガタになる、瘢痕が硬くなる、引き攣れる、コブができる、目の形に左右差が生じる、瞼が閉じれなくなる(兎眼)、その結果ドライアイになる、却って瞼が開きづらくなる(医原的眼瞼下垂)、瞼が開きすぎて三白眼になる、睫毛が挙がらないか中央だけ過挙上・過矯正となって三角目や上方三白眼になる、ダウンタイムが3ヶ月前後かかる、慢性的な頭痛が生じる、等の合併症、問題点、後遺症がしばしば起こります。
そんなリスクが高いにも拘らず、当事者である担当外科医でさえその程度までは予測ができないのです。一日数千回も瞬きをする上眼瞼にメスを入れると、どんなに慎重な名医でも瘢痕治癒過程で生じる線維化、癒着、切断筋の萎縮、皮膚や真皮の厚みの差、開閉眼の自然さ等を㎜単位で予測することは人間業である以上、絶対に不可能なのです。
●何故不適応な眼瞼下垂手術が横行し、合併症の被害者が増加しているのでしょうか?
前回のコラム欄で再定義した真性眼瞼下垂が、本来は保険適応対象で仮性眼瞼下垂が保険適応対象外なのですが、現状では仮性眼瞼下垂に対しても保険診療と見做してリスクの高い「挙筋短縮術」や「挙筋前転術」をされてしまっているケースが散見されます。その原因は、
第一に、多くの医師が眼瞼下垂の治療=全切開を伴う挙筋短縮術(眉下切除や前転法を含む)しか方法が無いと思っていること
第二に、「眼瞼下垂」と診断する際に担当医が主観(尤も、開眼時に眉も挙上してしまう方を眼瞼下垂という医師もいれば、前額を抑え込んで瞼が挙がりにくい方を眼瞼下垂と決めている医師もあります)で診断していること
第三に、保険診療で許可されている眼瞼下垂の治療法が挙筋短縮術(前転法を含む)しかないこと
第四に、保険診療に(医師側の経営方針や金銭欲は別としても)持ち込むためには「眼瞼下垂の疑い」病名をつける裁量が医師側に与えられていて、客観的に検証がなされていないということ(つまり、日本では保険診療にするための「疑い病名」が医師側の理屈でつけ放題であること)
等の理由や背景があります。
たとえ適応に対して厳格または良心的な医師に担当してもらったとしても、眼瞼下垂の治療を依頼された際に治療法そのものに全切開や切除をする術式以外の選択肢が与えられていないことが、不適応被害者が増加の一途を辿る原因になっているのです。
形成外科学では全切開や保険診療の眼瞼下垂治療における挙筋短縮術、前転法を成書記載の正当な手術法だと教えられており、それらの有効な代替法が無いと信じ込んでいるからこそ、正統論に拍車がかかっているのです。
次回のコラムでは、「医師に眼瞼下垂と言われても全切開併用手術が何故NGなのか?」について述べて参ります。