皮膚科でできる肝斑治療の特徴と効果
シミ取り・肝斑・毛穴治療 (肝斑治療)
公開日:2018/12/07
このように、なぜか顔がいつも「くすんでいる」ように見えてしまうシミの1つに、肝斑と呼ばれるシミがあります。肝斑は、女性特有で発生しやすいシミと言われており、その形状、特徴は明らかに一般的なシミと異なり、コンシーラーで一生懸命隠しても隠しきれない非常に厄介なシミとされています。そして、肝斑はセルフケアではなかなか症状が改善しにくいことでも知られており、治療には肝斑症状に精通している医療機関を探すことが最も重要なのです。
今回は、自分ではなかなか解決しにくい肝斑について、皮膚科でできる治療の特徴と効果を徹底解説いたします。
監修 平野温子
医療法人美静会 スキンケアクリニック 院長
2000年「医療法人美静会 スキンケアクリニック」を開業。
肝斑のメカニズム
一般的に想像されるシミは、医学的には主に老人性色素斑と呼ばれるもので、紫外線によるダメージの蓄積が原因とされています。紫外線による刺激で肌がメラニン色素(日焼けで肌の色を濃くする色素細胞)を作り出し、さらに紫外線による肌のダメージなどから、メラニン色素が適切に肌から排出されなくなる事から発生します。
一方で肝斑は、明らかにこれらのシミとは発生原因も形状も異なります。実は肝斑の原因は、未だにはっきり特定されているわけではありませんが、数々の臨床結果から「女性ホルモンの乱れ」により引き起っているのではないかとされています。
なぜなら、男性には肝斑と同様のシミが見受けられることがほぼ少ない事と(ごく稀に男性にも見受けられる人はいますが)、肝斑と見受けられるシミに悩む人の年代が、おおよそ30~40代の女性に集中しているからです。
女性の30~40代は、妊娠、出産、産後、子育てストレス、閉経や更年期など女性ホルモンバランスが乱れてしまう事が多く、それにより体内のメラノサイトが活性化してしまうことで黒色のメラニンが作り出され、皮膚の表面に褐色状に現れてくるのが肝斑です。実際に、閉経後とされる50代半ば以降の女性には、50代半ばで初めて肝斑ができるという方はほとんど見受けられず、元々ある肝斑がだんだん濃くなる症状になります。
この年代以外でも、ピルなどを服用すると発生しやすくなるなどの特徴もあります。
このように、女性のホルモンバランス、体質的なものが起因しているとされる肝斑ですが、一般的なシミのように紫外線の影響を全く受けていないのかと言うとそうではありません。肝斑体質の人であっても、紫外線のダメージによりメラニンが生成され、肝斑と併発して症状が悪化してしまうケースも多い為、決して普段からのUVケアに手を抜くことはできないのです。
肝斑と他のシミの見分け方
さて、その肝斑特有のシミの形状はどのようになっているかですが、肝斑は基本的に顔の「左右対称」に発生し、主に頬骨、目の周り、鼻の下などに見受けられます。
また、形状も歪な形で境界線がはっきりせず、色調もぼんやりとした薄褐色をしている為、常にくすみや血色の悪さが目立ってしまう印象になってしまうのです。
また、形状以外に肝斑を見分けるチェック項目としては、シミが気になり始めた時期の前後などが以下のポイントに該当していれば、肝斑である可能性が濃厚と言えるでしょう。
・輪郭がクッキリしたシミではなく、ぼんやり広がっているようなシミ
・妊娠中やピル服用中前後から急に目立ってきた
・更年期症状が出始めた頃から目立ってきた
・30代半ば以降~50歳前後である
・ストレスが多い、疲れやすいと感じる
・何らかの理由で女性ホルモンの乱れを感じて目立ってきた
・シミの色が季節、体調により濃さや形状が変わる
肝斑はトラネキサム酸で徐々に改善していく
肝斑の内服治療薬として代表的といわれるのがトラネキサム酸です。ところで皆様このトラネキサム酸がどのような成分かご存知でしょうか?
「トラネキサム酸?歯磨き粉のCMで聞いたことがあるような気がするけど...」というような方もいらっしゃるかと思いますが、一般的にトラネキサム酸といえばこういったイメージが先行していますよね。実は、この歯磨き粉の成分に使われているトラネキサム酸が、肝斑の改善に一定の効果があることが認められているのです。
では、歯磨き粉に使われているようなトラネキサム酸が、なぜ肝斑の改善に有効なのでしょうか?
トラネキサム酸が肝斑改善に有効なのは何故?
トラネキサム酸とは、アミノ酸の一種です。主な効能としては、抗アレルギー、抗炎症、抗出血の作用があり、歯磨き粉に使われている理由はこの「抗炎症、抗出血」のためです。
しかし、近年の研究で、トラネキサム酸には優れた美白効果があることでも知られており、肝斑シミ改善の第一選択薬としての効能が実証されています。それは、トラネキサム酸を内服薬として服用することで、肝斑シミが発生する体質の人がメラノサイトでのメラニン生成を抑制する効果を期待することでできるからです。
具体的には、トラネキサム酸は肌がメラニンの生成を促進する際に働く「プラスミン」という成分を阻害する作用をもっており、新しいメラニンの生成を防ぐ事で、肝斑を始めシミのトラブルを予防、解消していきます。肝斑以外のシミでも効果を発揮する事が分かっており、美容皮膚科ではシミ治療目的で処方される事も多い内服薬です。
トラネキサム酸を内服薬として服用したからといって即効性は期待できませんが、一定期間服用することによって、徐々に改善していくことは期待できます。
より早く肝斑を解消するための治療方法
肝斑の治療にトラネキサム酸の内服が非常に有効であることは、前述しました通りです。
しかし、トラネキサム酸は新しいシミが出来ないように防ぐ事は出来るものの、今あるシミそのものを解消していくわけではないため、効果の即効性が期待できるものではありません。トラネキサム酸の服用は、2か月程度継続する事で効果が得られるとされています。
では、より早く肝斑を解消したい場合はどうしたらいいのか。その為に有効な治療法も存在しますので、ここでご紹介します。
レーザートーニング
これまで肝斑は、紫外線のダメージによる一般的なシミと異なり、レーザー治療には適さないとされていました。なぜなら、肝斑はホルモンバランスの乱れによって肌内部がダメージを受けている事が原因の一つでもあるため、通常のシミ治療用レーザーを照射すると、その熱や刺激によって皮膚内に炎症が起こり、症状が余計に悪化しやすい事がわかっている為です。
しかし、この肝斑に対して、一定の効果の実績が認められている治療法が最近になって開発、普及してきていて、それがレーザートーニング法。レーザートーニングとは、1064nmの単一波光を出すQスイッチヤグレーザー機器「MedLiteC6(メドライトC6)」を利用した治療方法です。
このレーザートーニングが肝斑治療に有効とされる点は、皮膚に炎症を起こさない程度の非常に弱い力ででレーザー照射が行える安全で確実な方法である点です。また、ムラのない均一したフラットなレーザー照射ができるため、肝斑体質の人によく見受けられるお顔のくすみや毛穴の開きなどにも一定の効果を発揮しています。
肝斑治療のためのレーザートーニング必要回数は、元々の症状の状態にもよりますが、3~4週間に1回のペースで平均8~10回ほど必要とされており、効果の実感自体は2~3回目ぐらいからわかるようになります。
肝斑は体質のケアも行わなければ根治しないため、レーザーと合わせてやはりトラネキサム酸の服用などを併用する必要がありますが、レーザーで肌の表面からケアし、トラネキサム酸で肌の内側からケアするという両面でのケアを行う事によって、素早く肝斑を解消していく事ができます。
ケミカルピーリング
ニキビ肌や肌のくすみ改善に効果的な治療法として知られているケミカルピーリング。実はケミカルピーリングは肝斑にも優れた効果を発揮してくれます。そもそもケミカルピーリングとは、皮膚にフルーツ酸、グリコール酸などのピーリング薬剤(AHA)を塗布し、皮膚の表面や毛穴に浸透させることで古い角質を剥がし、肌のターンオーバーを促進する方法です。
通常シミとは、体内にメラニン色素を溜め込んでしまったものがうまく排出されないことが原因となっていますが、ケミカルピーリングにより肌のターンオーバーを促進させることでメラニン色素を排出し、肌のくすみ改善やキメを整えてくれます。ただし、手術直後は皮膚の赤みやヒリヒリ感が見受けられることがデメリットですので、くれぐれも紫外線や肌に刺激を与えないように注意を払う必要があります。
肝斑治療のためのケミカルピーリング必要回数は、およそ6~8回が目安となっており、肌のターンオーバーが正常に戻ってきたと実感したら長々と続ける必要はありません。施術ペースは、2~4週間に1回ほどで行うことがベストとされています。
ただし注意点として、ケミカルピーリングは肌への刺激になる面もあり、過剰にやりすぎると肝斑の症状を悪化させる可能性もあるという点です。
ケミカルピーリングは医師の診断のもと、正しい頻度や強さで受けるようにしましょう。
イオン導入
フェイシャルエステなどでも美肌に非常に効果的とされているイオン導入。
イオン導入とは、皮膚内部に微弱な電気浸透流を流し、有効成分を浸透させていく方法です。肝斑治療に有効とされるイオン導入の場合は、ビタミンC誘導体などメラニンの解消に効果的な成分を導入する他にも、前述しましたトラネキサム酸を皮膚の外から外用で成分を導入する方法があり、一定の効果をあげています。
トラネキサム酸は美白効果だけでなく、抗炎症効果にも優れているため肌の炎症による赤みを抑え、肝斑によるメラニン色素、黒くすみをを改善し、肌のトーンが明るくなったような実感が得られます。
肝斑治療のためのイオン導入の必要回数は、2~3週間に1回のペースでおよそ10~12回を1クールが目安となっていますが、特に肌に刺激になる治療法ではないため、特に回数を指定せず、美肌のメンテナンスのために定期的に行なっている方も多く見受けられます。
通常のレーザー治療は肝斑を悪化させる場合も
肝斑とよく間違われるシミ症状の一つに、紫外線の蓄積によるダメージで発症してしまう、最もポピュラーなシミの「老人性色素斑」があります。この老人性色素斑に有効な治療の第一選択肢として挙げられるのもやはりレーザー治療となり、一般的には700nm以下の単一波長のQスイッチルビー、ヤグ、アレキサンドライトなどのレーザー機器が使われます。
しかし、このQスイッチルビーレーザーは、老人性色素斑のシミやその他のアザ状のシミに対しては、多いにその効果が期待できますが、残念ながら肝斑にこの機械を照射してしまうと、より症状が悪化してしまう恐れがあるのです。なぜなら、Qスイッチルビーレーザーは非常に高温で刺激が強いことから、皮膚が過剰刺激を起こしてしまう可能性が高くなるからです。
ただ厄介なのは、肝斑と老人性色素斑を併発してしまっている人は、どちらの症状を優先して治療を行うべきか迷ってしまうことです。
基本的にはまずレーザーで悪化する可能性のある肝斑を解消し、その後で老人性色素斑の治療という形になりますが、すでに皮膚に現れているシミの状態によっても効果的な治療順序は変わりますので、肌の状態をよくよく吟味しながら、慎重に治療方針を決める必要があります。
肝斑と一般のしみの両方を専門に行っている、信頼できるクリニックで事前カウンセリングを受けてから治療に臨むようにしましょう。
まとめ
いかがでしたか? 今回は、皮膚科でできる肝斑治療の特徴と効果を詳しく解説させて頂きました。以前は肝斑の解消に有効な治療手段が少なく、通常のスキンケアの延長という形でしかケアが行えませんでしたが、近頃では様々な肝斑に有効な治療方法が開発されているので、悩んでいるよりもまずクリニックでの治療を受けてしまうという事が、肝斑を早く解消していくための最適な対応方法です。
治療法としては、肝斑の治療にはトラネキサム酸の内服薬と、レーザーなどを使った外科的な治療を併用することがより早期に症状の改善が見込める治療方法と言えますが、肝斑の状態によってもとるべき治療手段は異なりますので、治療実績の豊富な医師に相談してみるとよいでしょう。
特に、肝斑と一般的な紫外線が要因となるシミである老人性色素斑と併発してしまっている場合は、両方の治療に詳しい専門医によく相談をしながら治療方針を決める事が、悩み解消の近道です。
いずれにしましても、症状に悩み始めたらその対処は早いに越したことはありません。
まずはご自身だけで悩まれず、いくつかのクリニックでご自身のシミの状態を正確に医師に判断してもらうことから始めましょう。