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脂肪注入豊胸のメリット・デメリットと生着率について

豊胸・胸の整形 (脂肪注入(豊胸))

解説 口コミ広場編集部
監修 青井則之 医師

公開日:2019/09/04


手っ取り早く、そして確実に理想のサイズへの豊胸をするのなら、シリコンバッグの挿入が最もおすすめできるでしょう。

しかし、シリコンバッグは体に異物を入れる方法であるため、人体への安全性や、触った時の感触の自然さを重視するのであれば、シリコンバッグの挿入よりも脂肪注入のほうが良いという面があります。

脂肪注入とはお腹や太ももといった部分にある余分な脂肪を一旦脂肪吸引によって採取し、その脂肪を注入に適した状態にしてバストに注入移植するという方法で、自分の脂肪を注入するため、安全かつもっとも自然な仕上がりになる事が期待できます。

ただ、この脂肪注入で移植した脂肪細胞はすべてがそのまま残るというわけではなく、一部がバストに残り続ける一方で、体内に吸収されていってしまう脂肪もあり、この注入した脂肪に対するバストに残る脂肪の割合の事を生着率といいます。

シリコンバッグは挿入後そのまま体内に残り続けるため、サイズが小さくなってしまうというような事がありませんが、脂肪注入の場合では、せっかく注入を行ってバストサイズがアップしても、脂肪が吸収されて注入直後よりもサイズダウンしまう可能性が考えられるのです。

今回は、そんな脂肪注入による豊胸術のメリットやデメリット、そして具体的な生着率についてご紹介していきます。

監修 青井則之

宮益坂クリニック 院長

1999年 岡山大学医学部卒
    岡山大学医学部附属病院
    社会保険広島市民病院 初期研修医
2001年 国立四国がんセンター レジデント
2002年 東京大学形成外科・美容外科
    東名厚木病院 形成外科
2003年 都立大塚病院 形成外科
2004年 湯河原厚生年金病院 形成外科
2005年 国保旭中央病院 形成外科
2006年 東京大学 形成外科・美容外科 助手
2007年 東京大学 形成外科・美容外科 助教
2012年 東京大学大学院博士課程医学系研究科 修了
2015年 帝京大学形成・口腔顎顔面外科 講師
2018年 宮益坂クリニック開院

脂肪注入による豊胸のメリット・デメリット

それではまず、脂肪注入豊胸のメリットやデメリットについて考えてみることにしましょう。

脂肪注入豊胸のメリット

自分自身の脂肪細胞を移植するため安全性が高い

脂肪注入豊胸は、自分自身から採取した脂肪をバストに注入する方法であるため、異物反応などが起こるリスクが低く安全性が高い豊胸術です。

シリコンバッグ挿入の場合は、異物を体内に入れることになるため、なるべく体が異物反応を起こさないように工夫されてはいますが、体質によっては強い免疫反応が生じて摘出しなければならなくなることがあります。一方で自分の脂肪を使用する脂肪注入豊胸術ではそのような心配がありません。

また、異物を体内に入れないという事は精神的な負担を軽減するメリットもあります。シリコンバッグの挿入では、どうしても「豊胸手術をした」という事が負い目となったり、施設によっては乳がん検診時のマンモグラフィーを撮影してもらえなかったり、検診の時に申告しないといけなかったりと、心の負担が少なからずあるのですが、自分の太ももやお腹の脂肪を乳房に移動する脂肪注入術の場合は、こうした心の負担も少ない場合が多いようです。

気になる部分から脂肪を採取できる

脂肪注入豊胸に使用する脂肪は、お腹や太ももなど脂肪が多い部分から採取することが可能ですので、豊胸と同時に痩身効果も期待できます。バストを大きくしつつ、お腹周りを細くすることでより大きなバストに見せる事も可能となります。

ただし、1部位から採取できる脂肪の量には上限がありますので、詳細についてはカウンセリングで医師に相談してみると良いでしょう。


注入時の傷跡が少ない

脂肪注入では、脂肪吸引を行う際にカニューレを挿入するために切開される部分と、脂肪注入の針を刺す事でつく注射跡ができますが、どちらも数ミリの大きさであるため、手術跡が目立つという事はまずありません。

シリコンバッグを挿入する場合では、なるべく小さい切開にて、脇のシワなどに合わせて目立たないように行いますが、、どうしても数センチの傷跡はできてしまうため、体質などによってはしばらく傷跡が気になってしまう場合があります。

日本ではまだ豊胸をはじめ美容整形をしたことが「ばれたくない」という方がほとんどですので、傷跡が目立たないという事は一つの大きなメリットであるといえます。

脂肪注入豊胸のデメリット

注入した脂肪がすべて残り続けるわけではない

移植のために一度採取された脂肪は、血管から離れるため、栄養を受け取って活動する能力を失っています。脂肪が胸に移植された後で生着するためには、血管と脂肪細胞がつながって栄養や酸素を受け取る事ができるようになる必要がありますが、そうならなかった脂肪細胞は死んでしまい、体内に吸収されてなくなってしまいます。

そのため、脂肪注入では手術直後に理想的な大きさになっても、その後数か月の間でバストサイズがダウンしてしまう事になります。


胸の中で生着できる脂肪細胞の量には限りがあるため、一回に大量の脂肪を分散しないで一か所に注入すると、移植した脂肪細胞は栄養を受け取れなくなり、大量の脂肪細胞が死んでしまう上にその後に嚢胞や石灰化が起こりやすくなります。

1回に大量に注入すると脂肪壊死のリスク

前述のように注入した脂肪細胞はすべてが生着するわけではないのですが、生着しなかった脂肪細胞が多い場合には体内への吸収が追い付かずオイルの入った袋状のもの(オイル嚢胞)ができたり、壊死した脂肪の外側が固い被膜となり、さらには被膜が石灰化という変化を引き起こす事があります。

石灰化がが生じると吸収されずにずっと残り続ける事となり、乳房を触るとしこりを感じることや、大きなしこりができると乳房の形が変形してしまうこともあります。場合によっては摘出手術が必要になることもあります。

このようなことが起こらないようにするには、脂肪注入を分散してまんべんなく注入することと、一度の脂肪注入で注入する脂肪量を患者様に応じて調節することが大切になります。


2回の手術が必要な場合もあります

脂肪注入術による豊胸では1回の手術でバストアップできるサイズに限りがあり、個人差はありますが、おおよそ1~2カップアップ(平均1.5カップアップ)になります。そのため自分の理想とするサイズによっては2回の手術が必要になることもあります。ふとももやお腹、腰など広い部位からの脂肪吸引を行う手術なので、2回にわたる手術となると体に負担がかかったり、2回分の費用が必要になったりする可能性もあります。

もともと体脂肪が少ない方には不向き

もともと体脂肪が少ない方の場合ではとる脂肪がなく、脂肪注入による豊胸手術を受けられない可能性がありますので自分が脂肪注入術に適しているかどうかをまず知る必要があります。

痩せている方でも下半身だけ太い体型が日本人には多く、あきらめていても案外手術が可能であったり、逆に痩せているのに皮下脂肪があると思い込んでいたりする場合もありますので経験豊富なドクターに判断してもらうのが良いでしょう。

バッグ挿入ほどの劇的な変化は期待できない

バッグ挿入の場合では、胸の皮膚に余裕があれば、大きくしたいサイズ分のシリコンバッグを用意すればいいため、2カップ以上のバストアップが可能ですが、脂肪注入豊胸ではそこまでの豊胸効果を期待できず、目安としては2カップ以内(平均1.5カップ)になります。

脂肪注入による豊胸をご希望の方は、1回の治療で極端なバストアップ効果を期待できないことを念頭に置いて手術を受ける必要があるでしょう。

ただし、皮下脂肪が十分にある方の場合、複数回(2‐3回)の治療を受けられ自分の理想とするバストサイズを手に入れられる方もいらっしゃいます。

脂肪注入による豊胸の生着率はどれくらい?

脂肪注入豊胸のデメリットとしてご紹介しましたが、前述のとおり脂肪注入によって移植した脂肪細胞は、そのすべてが生きた細胞となって生着するのではなく、一部の脂肪は吸収されてしまいます。では、実際に生着率はどの程度なのでしょうか。


結論から言えば、脂肪注入による脂肪細胞の生着率は、40‐80%程度となっていて、採取した脂肪や注入する乳房の状態によって個人差がでます。脂肪の吸収は3か月から半年で落ち着きますので、半年を過ぎて定着している分については、半永久的にに残るといわれています。


現在は脂肪の生着率を高めるため、各施設でいろいろ工夫された方法が行われています。

その例がコンデンスリッチ法PRP注入といった方法です。

コンデンスリッチ法とは?

吸引脂肪から不要物を除去するには大きく静置法、陰圧濾過法と遠心分離法があります。コンデンスリッチ法はネーミングが有名になっていますが、大きくは遠心分離法の一つになります。この方法では、採取した脂肪を特殊なフィルターがついたシリンジに入れて遠心分離機にかける事で、吸引脂肪に含まれるオイル(壊れた脂肪細胞の中からでてきます)がフィルターの上にたまり、除去しやすいのが最大の利点となります。遠心分離法なので吸引時の血液や麻酔薬などの不純物も極力取り除くことができ、純度が高い脂肪細胞をバストに注入することができます。

不純物がすくない分、従来の方法よりも脂肪細胞の濃度が濃い状態で注入できるため、限られた胸のスペースに効率よく脂肪細胞を送り込むことがきます。気になる生着率ですが、通常の遠心分離法でもオイルは取り除くことができ、高濃度の脂肪細胞を注入できるため、変わらない可能性が高いのですが、遠心分離法以外の方法との比較では優位性があるもしれません。ただし、詳しく検討した研究論文は今のところなく、今後の研究が待たれます。

また、最近ではコンデンスリッチ法では遠心分離機にかける際に健康な脂肪細胞もダメージを受けてしまう可能性があるといわれていますが、適切な遠心圧(700~1200G)で行うと脂肪細胞を破壊しないで遠心分離できることが論文で報告されています。コンデンスリッチ法ではこの範囲内で遠心分離を行いますので安全です。


PRPや成長因子の同時注入

PRPとは血液内に含まれる血小板という成分を凝縮したもので、手術を受ける人の血液から作られるものです。

血小板は怪我をした際に傷口の血液を固める成分ですが、血液を固めると同時に、周囲の細胞の回復を促進するための「成長因子」も放出します。


成長因子とは細胞の活動を促進する成分の事で、傷口付近の細胞を活性化させて創傷治癒の手助けをしたり、新しい細胞が作られるのを促進するという働きがあります。


PRPを脂肪細胞と同時に注入する事で、この成長因子が働いて、注入した脂肪細胞に結び付く新しい血管の生成を促進し、生着率を向上する事が期待されます。

PRPは自分の血液から作るため安全性が高い方法です。また、成長因子自体は化粧品の成分としても利用されているなど、ある程度製法が確立されているものですので、医療用の成長因子を直接添加する場合もあります。

PRPや成長因子によってどの程度生着率が向上するか気になるところですが、PRPに主に含まれているPDGFという成長因子を添加した症例とそうでない症例の比較研究では生着率に差がなかったと報告されており、現在のところ劇的な生着率の改善には結びついていないようです。


脂肪注入による豊胸術のメリットデメリット

脂肪注入豊胸はバッグ挿入のように異物を挿入することに抵抗がある方に適した手術です。しかし、今回ご紹介してきたように、この手術1回分のバストアップには限りがあるといった欠点もあります。

とはいえ、自分の脂肪でできた胸は触り心地も形態も自然で、乳房検診を受けるときに破損する危険性や温泉に入るときにばれるかもしれないというストレスがほぼなくなります。脂肪注入豊胸をお考えの方は、メリットとデメリットをしっかりと理解した上で、まずは一度脂肪注入術の経験豊富なドクターに相談してみてはいかがでしょうか。


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