脱毛の際にやけどする原因と、トラブル予防や解消のための方法
医療脱毛 (医療レーザー脱毛)
公開日:2019/01/28
そこで今回は脱毛とやけどの関係、やけどをしないために注意すべきこと、NG対策などについて解説します。初めに結論から言ってしまうと、脱毛とやけどには関連性があるものの、過度な心配は必要ないと考えていますので、ぜひ不安を解消するためにも最後まで読んでください。
監修 平野温子
医療法人美静会 スキンケアクリニック 院長
2000年「医療法人美静会 スキンケアクリニック」を開業。
脱毛によってヤケドが発生しやすいのは医療レーザー脱毛
一般的に脱毛の際にやけどを負うケースは、レーザー光を使ったレーザー脱毛で発生する可能性があるとされています。レーザー脱毛は強力なレーザー光を使用するため、医療機関で施術する医療行為に該当します。
一方で、エステサロンなどで提供される脱毛法であるフラッシュ脱毛も医療レーザー脱毛と似たような光を使用しているものの、そもそもエステサロンでの脱毛は肌の細胞を破壊する程の出力では行えない事から、ごく微弱な光のためやけどの可能性は非常に低いとされています。
このことから、脱毛の際にやけどを負う可能性が高いのは、どちらかといえば医療機関によるレーザー脱毛であると言えます。
しかし、レーザー脱毛にも複数の種類、または機材があるため必ずしもレーザー脱毛のすべてがやけどの危険性があるとは限りません。さらに、施術者の技術、使用するレーザー機器、施術される人の肌色や毛量、毛密度などによってもやけどの可能性は変わります。
脱毛によるやけどはレーザー脱毛、施術者の技術、対象者の肌色や毛量、毛密度など複数の要因が重なることで起こることを理解しましょう。
脱毛時にやけどをする原因やメカニズム
脱毛の際にやけどをするにはいくつかの要因がありますが、ここではなぜレーザー脱毛でやけどが発生する可能性があるのかを解説します。
まずはレーザー脱毛の大原則を理解しましょう。レーザー脱毛は、基本的なメカニズムとして、レーザー光を毛のメラニン色素に照射(反応)させ、熱エネルギーを蓄積して毛根を破壊します。レーザー光を受けた毛根、毛乳頭、毛包の周辺は一時的に軽度のやけどを負った状態になります。この際に赤みなどが表面化したことをやけどと認識しているのです。
やけどをしない程度の出力でレーザー光を使えばいいのですが、当然ながらそれでは毛根を破壊するまでに至らないため、一定の出力が必要になります。医療機関で行うレーザー脱毛は毛根を破壊するために必要とされる程度の出力があるため、やけどをする可能性があるのです。
しかしながら、どの医療機関でも脱毛時にやけどをしないように設計された機材や手法を用いているため、実質的にはやけどのリスクは限りなくゼロに近いのが実情です。
この他に、レーザー光はメラニン色素に反応する特性があることから、既存のシミや日焼けした肌の場合は必然的にやけどのリスクが高まります。シミや日焼け肌はメラニン色素を多く蓄積または生成している状態のため、レーザー光を受けると過度に反応して炎症ややけどが発生しやすくなります。本来であれば毛に当たるべきレーザー光が他の箇所のメラニン色素に反応してしまうのです。
このように、レーザー脱毛によるやけどの可能性は、レーザー光がメラニン色素に反応する特性が関係しています。そのため、メラニン色素が多い状態であればあるほどやけどのリスクも高まることを覚えておきましょう。
現実的にはエステサロンでのヤケド事故が多発している
上記で説明した通り、本来であれば出力が弱く、肌の細胞に影響を与えない事を前提としているエステサロンでの脱毛では、ヤケドの可能性は低いのですが、現実問題としてはエステサロンでの脱毛でこそ、ヤケドのトラブルが多発しています。
その理由として、エステサロンで行われている光脱毛は光による刺激が毛だけではなく肌全体に分散しやすいという事が挙げられます。
どういう事かというと、医療レーザー脱毛で利用されるレーザーは、使われている光の種類が「毛根部分に影響しやすい」1種類の光だけであるのに対し、光脱毛では毛根に影響を与えやすい光だけではなく、肌表面で吸収されやすい光など複数の光を同時に発射するという特徴があります。
そのため、本来は法律によって禁止されている「毛根を破壊するようなエネルギー」で光を照射すると、その刺激は毛根部分だけではなく肌の表面などにも同じように加わる形となり、ヤケドのトラブルに繋がりやすいのです。
エステサロンの脱毛でヤケドの可能性が低いというのは、裏を返せば「脱毛効果が発揮されないレベルの照射なら安全」という事であり、無理に永久脱毛の効果を得ようとすればヤケドなどのリスクは医療レーザー脱毛よりも高くなります。
ちなみに、エステサロンでヤケドを引き起こすような脱毛施術を行った場合は医師法違反や業務上過失傷害となり、過去に刑事告訴を受けている例などもあります。
多くは示談にて解消されていますが、個人経営のエステサロンなどではトラブルが起きた場合の補償も充分に行われないケースが多いため、注意が必要です。
やけどを回避するための対策は?
脱毛によるやけどを未然に回避することは可能です。やけどをしないために医療機関(クリニック)側がするべきことと、施術される側がするべきことの両面がありますので、それぞれを理解してやけどのリスクを回避しましょう。
医療機関(クリニック)側がすべきこと
以下で紹介する項目は医療機関側がするべきことですが、言われるがままに進めるのではなく、必ずご自身でこれらの対応を確認してください。
カウンセリングでのしっかり確認や説明
レーザー脱毛を実施する際には医師による肌の診察や、カウンセラーによる診断が実施されます。この際に、施術内容の説明だけを聞くのではなく、やけどの可能性に対する説明や、万が一の時の対応、アフターケア、ご自身の肌と脱毛法の相性などについても説明してもらいましょう。
カウンセリングはどの医療機関でも実施していることですが、医師から施術の説明を十分に聞いたうえで施術するかどうか決めましょう。
テスト照射で刺激の確認
レーザー脱毛ではアレキサンドライトレーザー、YAGレーザー(ヤグレーザー)、そしてダイオードレーザーなどのレーザー光が使われるのが一般的です。肌にトラブルのある方は、テスト照射と呼ばれる、実際の機材を使ったテストを実施し、照射時の刺激や痛みの程度などを確認しています。
仮に、やけどの心配はないと説明をされたとしてもテスト照射を希望して、痛みや皮膚の変化を観察することをおすすめします。
施術者の技術レベルを確認
レーザー脱毛は医療行為に該当します。そのため、担当する医師や看護師がどれくらいの施術経験があるかを確認しましょう。公式ウェブサイトで公表されている場合があります。また、施術経験と同時に使用する機材の扱いに慣れているかも見極める大切なポイントです。
ちなみに、医療レーザー脱毛は医療行為であるため、医師または医師監督下で看護師のみが施術を行う事が可能です。
看護師ではないスタッフなどが施術を行うようなクリニックでは、トラブルがあった際に隠ぺいが図られるなども考えられるため、施術者が有資格者かどうかを確認する事も必要です。
施術される側(あなた)がすべきこと
日焼け対策
施術してもらう側の鉄則として日焼けは厳禁です。なぜなら、日焼けをしてしまうとメラニンが生成されて、脱毛時に使用するレーザー光に反応するためです。日焼けをしてしまうとレーザー脱毛は受けられない場合もありますので、やけどはもちろん、通院スケジュールの観点でも日焼けは回避しましょう。
メラニンが多い状態はやけどのリスクが高まることに直結しますので、通院期間中を通して日焼けは避けてください。
逆に、肌の色が白いと脱毛の効果が発揮されやすくなるという利点もあります。
乾燥対策
乾燥肌は刺激に弱く、敏感な状態です。そのようななかでレーザー脱毛による刺激を受けると、皮膚の内側でレーザーによる熱エネルギーを発散しづらくなるため、やけどのリスクが上がります。施術前だけでなく、日常的に保湿を心がけて健康的な肌にしておきましょう。
また、レーザー照射後も保湿は大切で、レーザーの照射を受けた後の肌は熱によって乾燥しやすくなっているため、しっかりと保湿を行う事が美肌を保つためのポイントとなります。
脱毛の際は特に前後の保湿を入念に行うようにしましょう。
ダイオードレーザーなど刺激の少ない脱毛機を検討する
レーザー脱毛の種類のなかで「ダイオードレーザー」はやけどのリスクが低いとされています。この理由はダイオードレーザーの光は肌の色素に吸収されづらい特性があるためで、正常な皮膚への刺激が少ない光と言われています。また、最新のダイオードレーザーの機材には冷却装置も備わっている物もあり、やけどリスクを回避したい人や肌が色黒の人などに適しています。
ダイオードレーザーを使った脱毛をしてくれる医療機関を検討することもやけど回避の対策としておすすめです。
このように脱毛の際にやけどを防ぐには医療機関側と施術される側がするべき対策が存在し、それらをまとめて理解することが大切です。医療機関で脱毛を受ける際はこれらの点に注意して、やけどなどのトラブルを回避しましょう。
やけどと思った場合は?
レーザー脱毛を受けた際にやけどを負う可能性は低いとされていますが、万が一、施術後にやけどかもしれないと思う症状がでた場合の対処策を解説します。
レーザー脱毛によるやけどの症状として、痛みや痒みを伴う赤み、ミミズ腫れや水ぶくれがあります。このような症状がでた場合は医療機関に診てもらうことが望ましいですが、応急処置として以下の対策をおすすめします。
流水による冷却
やけどの応急処置の基本通り、流水で患部を冷やすようにしましょう。15分以上を目安にして患部周辺を冷却してください。患部だけを集中的に冷やすよりも、患部周辺全体を冷やすことが大切です。
炎症止めの軟膏
脱毛を受けた医療機関によっては炎症を抑える軟膏を処方してくれることがあります。その場合は軟膏を塗ることでやけどによる炎症を抑制可能です。市販品の抗炎症剤は処方薬よりも効果が低い可能性があります。
やけどの際のNG対策
脱毛の施術後にやけどかもしれないと思って応急処置するのは悪いことではありませんが、いくつかのNG対策がありますので覚えておきましょう。
急激な冷却
氷や保冷剤を当てることや氷水に浸すことは凍傷のリスクがあるのでNGです。タオルに包んだ氷であっても患部周辺の皮膚に付着すると皮膚を痛める可能性があります。
また、もう一つの冷却を行う場合の注意点としては、肌に張り付けるタイプの冷却材は利用しないという事です。冷えピタなど張り付けるタイプの冷却材は、剥がす時に肌への負担となる可能性もあるため、必ず流水などで冷やすようにしましょう。
患部への刺激
水ぶくれになった部分を潰すことを始め、マッサージや引っ掻くことなどの刺激はNGです。とくに水ぶくれは傷を修復するためのリンパ液などが含まれているため患部の保護に役立ちます。余計な刺激は与えないようにして安静にしましょう。
自身で判断して放置
最もやりがちなNG対策のひとつです。施術後に多少の赤みや熱を持つことは少なくありませんが、この状態を放置しておくことはやけどの進行や悪化に繋がります。このようなことがないように予め医師による説明がありますが、ヒリヒリした痛みや掻いてしまいたくなるような痒みがある場合は速やかに医師に診てもらいましょう。
実際のところはどうなの?
レーザー脱毛によるやけどは使用するレーザー光や施術者の技術、そして肌の色やメラニンの量などが関係して起こりますが、実際のところ多くの医療機関では事前カウンセリングや診察の結果を見て個々に合わせた脱毛法を提案するなどの取り組みを実施しているため、レーザー脱毛によるやけどのリスクは低いと公表しています。
また、使用する機材も日進月歩で改善されており、冷却機能が充実している物や、レーザーの出力をこま目に調整できる物など様々です。このような背景から、レーザー脱毛によるやけどの可能性は極めて低く、カウンセリングやセルフケアなどを通じて回避することも可能と言えます。
まとめ
脱毛によるやけどは様々な要因があるため必ずしもゼロとは言い切れませんが、回避策や予防策など事前に取り組めることがあります。これらには医療機関側だけでなく、施術される側も理解すべきことがありますので、ぜひ紹介した正しい知識を身につけてください。
※脱毛の回数や金額、期間等はあくまでも参考値のためドクターの監修内容ではございません。 クリニック様エステサロン様によって異なるため、 詳細のご質問は、お電話やカウンセリングの際などに各クリニック様・エステサロン様に直接お問い合わせくださいませ。