ピアスの正しいアフターケア法
ピアス穴あけ
公開日:2018/08/05
なぜ、心臓血管外科で感染対策?と疑問に思うかもしれませんが、感染対策が手術成績、つまり手術死亡率や入院期間などに直結するからです。心臓血管外科の場合、手術創に感染すると縦隔炎などの重篤な合併症を引き起こし、致命的な転帰となることがあります。現代の医学で感染を100%防ぐことはできませんが、限りなくゼロに近づけるために日々研究しているのです。
外科医が参考にしてる指針として、アメリカのCDCが発表している手術部位感染予防に関するガイドラインがあります。それらを参考に、多くの日本の外科的診療科では手術部位の感染予防対策がなされています。具体的には、手術創は48時間で閉鎖し外界と完全に遮断されるため、その間はドレッシン材などで被覆し清潔を保ち、その後は基本何もせず、必要に応じて生理食塩水や水道水で洗浄して清潔を保つというものです。消毒は推奨されていません。最高レベルの感染対策をしてる心臓血管外科でも術創部に消毒は一切しませんし、これは現代の外科学の常識です。
逆に、創が閉鎖する48時間以内に消毒すると、消毒液が組織を障害して創傷治癒を遅らせる、免疫機構を破綻させてかえって感染の原因になるという報告もあります。また、消毒はあくまで消毒であって、皮膚を滅菌できるわけではないため、菌量を一瞬減らせるでしょうが数時間後には細菌が増殖しているのです。また、48時間後には創が閉鎖しているわけですから、細菌が創から侵入することは基本的にありません。まとめると、48時間以内の消毒は創にとって有害であり、48時間経過後の消毒は意味がないということです。
ピアスの場合も同様で、細いファーストピアスで開いた穴は手術で縫合した創と同等と考えられます。つまり、CDCのガイドラインに従えば、消毒は一切不要で特に48時間以内はきちんと創が閉鎖するように一切手を触れないのが良いでしょう。
その後も回したり、動かしたり、消毒したりすると、せっかく閉鎖した穴の表面が剥がれて出血したり、浸出液が出たりして、「外界から遮断される48時間」がいつまで経っても経過しないことになります。そのうちに、創から雑菌が侵入して感染することもあります。
以上まとめると、ピアス後の正しいアフターケアは以下のようになります。
①消毒は絶対しない
②ピアスホールが安定するまでの1か月間はピアスを回さない・動かさない・外さない・むやみに触らない
③48時間経過後は必要に応じてピアス周囲をシャワーなどで洗い流し清潔を維持する
簡潔に表現すると、ピアスに一切触れず、1ヶ月間完全放置で構いません。
これを守れないと、感染、出血、金属アレルギー、ホールの不完成などのホールトラブルを高率に起こします。
年間数100回ピアッシングを行っておりますが、この方法で当院でピアッシング後にトラブルが起きたケースは1例もありません。それでもネットでトラブルの相談や体験談が多いのは、セルフで開けていることや、誤ったアフターケアが原因と考えます。