豊胸のシリコン除去に使用する麻酔について

Kunoクリニック 梅田院総院長

九野広夫男性

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初めまして。医療法人美来会Kunoクリニックの九野です。シリコンバッグ抜去の場合には、専門的見地から一般的な見解を申し上げますと、挿入手術よりも抜去手術の方が、剥離エリア面積が少ない（バッグが入っているスペースは、バッグの破損や被膜拘縮が高度でない限り）ため出血のリスクも比較的低いのですが、笑気麻酔だけで行う場合は、そのリスクが増大します。

麻酔には大きく分類して「意識レベルを低下させる（鎮静）または無くさせる」麻酔と、「痛みを和らげる（鎮痛）」麻酔がありますが、実は麻酔法の選択はそれだけの理由で行っているわけではありません。俗に、意識を保ったままで鎮痛目的だけで麻酔法を選択する場合でも、キシロカイン局注にエピネフリンという血管作動作用（所謂「止血作用」）のある成分が混和されているE入りキシロカインを、適切に希釈して当院では採用しています。

切開や剥離予定のところを麻酔薬で膨張させると同時に、局所麻酔には動脈を収縮させて出血を抑える目的があるのです。更に、鎮静または意識を無くさせる麻酔を用いる場合でも、必ずそのE入りキシロカインを用います。

笑気麻酔だけで手術を行うことはその過程が抜け落ちるため、生きて寝ている人を刃物で切っているだけの危険な手術になると思います。

そしてもっと危険なのは、鎮痛作用がある程度得られている状況下で、鎮静の麻酔薬を（高用量用いずに）節約できるところを、鎮痛作用を得ずして笑気麻酔の深度のみでコントロールしようとした際に、（手術の工程で痛み刺激が減弱したときこそ）急激に呼吸抑制（停止）が起こり得て、体内の気腔デッドスペースへの笑気ガスの移行が進み、後遺障害のリスクも増大させてしまう恐れがあります。

笑気麻酔だけでバストのシリコンを抜去するのは、医師として正気の沙汰ではありません。

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