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  ドクターインタビュー

より美しく、元に戻すが信条 大学病院で腕をふるう「再建美容外科医」

ドクター
インタビュー

より美しく、元に戻すが信条 大学病院で腕をふるう「再建美容外科医」

美容医療というと専門クリニックが主流となっているが、力を入れる大学病院も増えている。その中でも、早い段階から美容外科を標榜してきたのが日本医科大学付属病院だ。もともとは乳房異物の後遺症治療でその名が知られるようになり、現在でも、他の医療機関で満足な結果が得られず、最終的に同院を訪れる患者さまが多いそうだ。
そこでの経験で培った高い技術力によって、さらに幅広い美容医療を提供しようと奔走しているのが野本俊一医師だ。そこで、大学病院における美容医療のメリット・デメリット、さらに同院の特徴などについてお話を伺った。

医師、スタッフ、設備、対象疾患など大学病院で受ける美容医療のメリットとデメリット。

美容医療に対する考えをお聞かせください。

日本医科大学付属病院 形成外科・再建外科・美容外科では、美容外科の手術だけでなく、外傷や先天奇形など形成外科の患者さまの治療もしています。だからこそ、形成外科と美容外科の線引きといいますか、違いについては考えさせられますね。基本的には、外傷や腫瘍、先天奇形などで失った組織の形態や機能を正常に戻すのが形成外科で、正常なものをよりよく、美しくするのが美容外科です。ある意味、両者に介在する技術に違いはないのですが、アプローチや考えは切り替えなければならないと感じています。

個人的なお付き合いで美容外科の大御所の先生方に直接教えを請う機会も多いですが、「形成外科での研修を受けなければ美容の診療をしてはいけない」という先生もいるし、「形成あがりの医者はこういう考えが根本的にダメだから、意外と使えないんだよな」という声も聞きます。私としては頭を柔らかくし、“イイとこ取り”をして、最終的に患者さまによい結果として還元できればと思っています。


大学病院の美容外科のメリットを教えてください。

コスト度外視の豊富な人的資源と言ったら後輩たちに怒られるかな(笑)。加えて、入院治療や全身管理に関しては安心してお任せいただけると思います。重度のアレルギー反応であるアナフィラキシーショックなどにも迅速な対応ができますし、全身麻酔は当然麻酔科医が担当します。特にご高齢の方は、入院が必要ない手術でも念のため1泊することも可能ですから、そういう面でも安心していただけると思います。

対応疾患では、たとえば、眼瞼下垂や腋臭症などは、程度によっては保険がきくケースがあります。当院はどちらも対応できますから、ボーダーラインの治療といいますか、保険がきくのか、自費なのかと迷われるような場合はご自身で判断せず、一度ご相談いただきたいですね。
あとは機材や手術環境に関していえば、手術用顕微鏡や脂肪吸引器などは結構最新のものを揃えています。


逆に大学病院の美容外科としてのデメリットというと?

正直、苦労することはたくさんあります(笑)。まず受付、看護師、会計などのスタッフが美容専属というわけではないという点。あくまでも形成外科外来の中での1ブースとして美容外来をやっておりますので、美容の患者さまだけを特別扱いはできません。“美容慣れ”している患者さまの細かい要望までは徹底しきれないのが辛いところで、専属のスタッフ、さらには診察室や手術室、パウダールームなど“専用のハコ”も必要だと思いますね。

あとは、美容外科は、その日に手術を受けるつもりでカウンセリングを受けに来る方も多いですよね。でも大学病院では、簡単な日帰り手術でも採血検査や緊急手術としての申し込みなど、どうしても手順の煩雑さがあります。しかし可能なかぎり当日手術も対応させて頂きます。


より美しく、元に戻す“再建美容外科”。他科とも連携し、さらに盛り上げていきたい。

日本医科大学付属病院の特徴を教えてください。

当院は大学病院の形成外科の中でも、比較的早い時点で美容外科を標榜した施設の一つです。ただし、純粋な美容外科というよりも乳房異物の後遺症治療で名前が売れたこともあり、シリコンやパラフィンといった注入異物切除の患者さまの治療が多くなっています。最近ではアクアミドやダーマライブによる顔の後遺症も増えていますね。異物肉芽腫という状態になって皮膚の下に散らばってしまうと上手に切除するのはなかなか難しいのですが、形成外科で培った知識と技術を活用して、可能な限り元に戻します。いうなれば“再建美容外科”ですね。異物注入による美容外科後遺症を専門としてやってきたので、臨床経験や検査、治療のノウハウに関して、一日の長はあると思っています。さまざまな病院を渡り歩いて当科にたどり着く方もいらっしゃるので、なるべく期待に応えられるようにしたいです。

施術価格に関してはディスカウントして集客するようなやり方はしていないので、市場価格よりも比較的高めの設定かもしれません。ただし、注入異物肉芽腫の切除などは、はっきり言って他の施設ではやりたがらない治療ですし、それなりに希少性があると思っています。実際に、時間も手間もストレスもかかりますので。


他にアピールポイントがあれば教えてください。

小川令主任教授率いる我が日本医科大学形成外科教室は、自分も含めてスタッフ一同、ケロイド、傷あとの治療、熱傷再建やマイクロサージャリーに関しては最高のトレーニングを受けており、基礎研究においても世界でもトップクラスの教室です。定期的に学術カンファレンスを行い、常に最新の知識をアップデートしていますので、安心してお任せください。

また、他科との連携が密に取れる点も強みでしょうか。たとえば、当院の皮膚科には美容皮膚科業界の重鎮である船坂陽子先生がいらっしゃるので、スキンケアやケミカルピーリング、レーザー治療についての相談も可能ですし、逆にフェイスリフトなどの手術加療が必要な患者さまをご紹介いただくこともあります。皮膚科とは同じブロックで外来診療を行っており、今後もボトックスやヒアルロン酸などのフィラー治療関連で連携して、美容外来を一緒に盛り上げていく予定です。


患者さまの要求に応えられるように、「手術が上手くなりたい」という願望は尽きない。

先生自身のアピールポイント、さらに患者さまと向き合う際に心がけていることとは?

注入異物の治療を通じて、確固たる解剖の知識と正確な剥離技術の必要性に迫られてやってきました。そういう意味では眼瞼周囲手術、特に下まぶたのたるみ取り手術やフェイスリフト手術は経験を生かせますし専門としてやっていきたいと考えています。あまりよい言い方ではありませんが、異物が浸潤してない方の剥離は、異物の後遺症治療に比べると本当にやりやすいのです。

患者さまに対しては、普通のことかもしれませんが、「要求になるべく応えられるように」というスタンスでやっていきたいと思っています。それに技術が伴うように、修行の日々という気持ちでやっています。


今後の展望をお聞かせください。

患者さまの傾向としては、低侵襲でダウンタイムが短い治療が好まれるのは間違いないです。フィラーとか照射系の最新のトピックスにも対応できるようにしつつ、でもやはり個人的には少なくとも大学にいる間は手術にこだわってやっていきたいですし、一生“外科医”でありたいという思いはありますね。やはりオペはなくならないと思うので、時代の流れを受けてメスを置くのではなくて、逆に技を突き詰め、それが必要な時に頼られる人間になりたいと思います。それだけに、手術解剖の勉強と手技の研鑽はずっと続けて行きます。また、小川教授や医局の仲間たちの協力にはいつも感謝しているし、これからもより一層日本医大形成外科を盛り上げていければと思います。


大学病院ということで、後進の教育も重要ですね。

はい。これは最近、形成外科学会や美容外科学会でもシンポジウムやパネルディスカッションが組まれてトピックスになっているし、大変重要な事項です。医師の教育のために美容の患者さまを扱うのはやはりデリケートな問題で、大変なことも多いです。研修医や医学生の外来見学すら嫌がる方が多いですから。「大学病院なんだから察してよ」というのは一切通用しませんから、難しい課題ではあります。


最後に、読者へのメッセージをお願いします。

大学病院だから可能なことがある一方、難しいケースもあります。そのような場合でも、バックアップしてくれる関連施設がたくさんありますので、患者さまのご希望には何らかの対応をいたします。大学病院と聞くと敷居が高いと感じる方もいらっしゃると思いますが、美容医療分野に手広く対応していますので、お悩みのある方はぜ気軽にご来院、ご相談ください。

編集後記

個人的な話ですが、私の場合、「大学病院なら大丈夫」と信頼している一方、大学病院の医師については、言葉が足らないような、知りたいことはそこじゃないような…と、モヤモヤした経験があり、「独特だなぁ」などと感じていたりします。
でも、今回お話を伺った野本医師はまったく違いました。お話は非常に分かりやすかったですし、何よりも“分かってもらおう”という気持ちがあるように感じました。お人柄もフレンドリーで、固定観念に凝り固まらず、しなやかな発想をお持ちの印象。それが患者さまへの“対応力”につながっているのではないかと思います。大学病院の医師の本コーナーへのご登場は初めてということもあり、どれも興味深いお話でした。課題もあるようですが、ますますの発展を期待しています!

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